【大晦日決戦 徹底予想】ボクシングSフライ級王座統一戦を制するのは井岡一翔かフランコか?

ボクシングの本場、アメリカでは年間MVP(The fighter of the year)、年間最高試合(The fight of the year)といった恒例の年間賞が各メディア媒体から続々と発表されている。ただ、本来であれば2022年は最後の最後まで選考を待つべきだろう。師走の日本でなかなかの好カードが組まれているからだ。

 

12月31日、大田区総合体育館でWBO世界スーパーフライ級王者・井岡一翔(志成)とWBA同級王者ジョシュア・フランコ(アメリカ)が統一戦を行う。派手さこそないものの、2人の実績ある実力派チャンピオンがハイレベルな攻防を展開することは必至だ。

 

ここで予想するなら、日本男子初の4階級制覇王者でもある井岡がやはり優位ではあるのだろう。通算31戦(29勝、15KO、2敗)中、実に22戦が世界戦という豊富なキャリアを積み上げてきた井岡は、最近では“打たせずに打つ巧さ”と“卓越した試合運び”に円熟味を感じさせるようになった。順当ならば、今戦も33歳の大ベテランがポイントをピックアップしての判定勝ちが濃厚に思える。

もっとも、一方で「井岡は加齢ゆえに以前のようにハイペースでは戦えなくなっている」という見方があるのも事実ではある。実際に2021年以降、井岡はやや迫力を欠く内容での3連続判定勝ち。このペースダウンにこの試合の不確定要素とフランコの付け入る隙が存在する。

 

アンドリュー・モロニー(かつてバンタム級の4冠王者・井上尚弥に挑戦したジェイソン・モロニーの双子の弟)との3連戦で2勝1無効試合と勝ち越したフランコは、18勝(8KO)1敗1無効試合の戦績を積み上げてきた。正統派のボクサーファイターだが、どちらかといえば前がかりの好戦的なタイプである。

 

目を引くパワー、爆発力こそないものの、コンパクトなパンチを回転力豊かに放ってくる。27歳と年齢的に今が全盛期なのも魅力で、フルラウンドにわたってパンチを出せるスタミナとバイタリティをすでに証明してきた。

 

フランコが繰り出す左右パンチを井岡が見極め、得意のカウンターでダメージを与えられれば試合はワンサイドになる。ただ、主導権を掴みきれず、相手の連打を持て余すような流れになった場合、勝負はわからなくなる。的確さの井岡、手数のフランコが一進一退の攻防を繰り広げ、決着が終盤に持ち込まれるような展開も十分に考えられるのではないか。

 

冒頭で「年間賞選定を待つべき」とは記したが、今戦は実際には年間最高試合の候補になるようなスリリングなバトルになる可能性は高くはないのかもしれない。それでも技術的にハイレベルな好ファイトは有望。2年前の12月31日、井岡が3階級制覇王者・田中恒成(畑中)戦で近年最高の出来で8回KO勝ちを飾ったときのように、緊張感のあるミックスアップの末、どちらかの底力が引き出されるような戦いになることも望みたくなる。

 

時を同じくして、現在のスーパーフライ級は“群雄割拠”と呼び得る活況を呈している。世界2階級制覇王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)、4階級制覇王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア/帝拳)といった重鎮たちが健在なのに加え、IBF世界スーパーフライ級王者フェルナンド・マルチネス(アルゼンチン)のような新戦力も台頭。“ネクスト・モンスター”と称される元WBO世界フライ級王者・中谷潤人(MT)もすでにこの階級への転級を表明している。フランコの実弟、元WBC世界スーパーフライ級王者ジェシー・ロドリゲス(アメリカ)はフライ級に下げることを明言したが、遠からずうちにまた上げてくるだろう。

 

そんな強豪たちとのさらなるビッグファイトに駒を進めるべく、井岡対フランコ戦は両者のキャリアのひとつの到達点であり、同時に今後に繋がる貴重な通過点でもある。今戦を制したものは、階級を代表する統一王者として胸を張れるような充実した戦いになることを期待したいところだ。