専門家が判断!RIZIN vs. Bellator全面対抗戦の結果を予想!
12月31日大晦日、さいたまスーパーアリーナで世界レベルのスキルと度胸が競われる。『RIZIN』と『Bellator』、両団体の強豪が日本のRIZINのリングで、勝利でもって新年の門出を迎えるため、プライドを賭けて激突する。(画像:RIZIN FF)
メインイベントはフェザー級チャンピオン対決となり、Bellator王者パトリシオ・ピットブルとRIZIN王者クレベル・コイケが対戦する。その他、A.J.マッキー、ホベルト・サトシ・ソウザ、キム・スーチョル、そして堀口恭司がエントリー。 試合には出場しないが、Bellatorチームのキャプテンは元UFCライト級王者ハビブ・ヌルマゴメドフが務める。
MMA業界では、異なる団体が共通の目的のために協力することは珍しいが、Bellatorのスコット・コーカー代表は、このイベントが一過性のものに収まらない可能性があることに期待を寄せている。このように2つの団体が一緒になって、1試合や2試合だけでなく、5対5のチームマッチを現実に行うことを考えたとき、コーカー代表はメディア向けの会見のなかで次のような私見を述べていた。
「この試合は、オリンピックと同じように、自分たちのベストアスリートを5人連れてきて、相手もベストアスリートを5人連れてくるというもので、私のなかではミニ・オリンピックのようなものなのです」
「歴史的にMMA企業が独立分離しているせいか、それぞれの縦割りで活動していることもあって、こうしたもの(多人数による対抗戦)が実現することはなかった。事実、UFCはやっていないし、過去には我々もやっていなかった。榊原(RIZIN)だってやっていなかった。単発の試合はあちこちでやっていますけどね。しかし、このように5対5で、なおかつベストファイター同士で戦うというのは、まさしく歴史的なイベントであり、だからこそ、人々はとても興奮しているのだと思いますよ」
このコーカー代表の発言は、英『BBC』でも伝えられた。ボクシング業界よりも比較的閉じた世界であるMMA業界では、この大規模な対抗戦はエポックメイキングな事象として捉えられている。スポーティングニュースは、そんな「RIZIN vs. Bellator全面対抗戦」に注目。誰が勝者となるのか? 逆転はあるのか? 各試合を予想していく。
■大将戦|ホベルト・サトシ・ソウザ vs. A.J.マッキー|ライト級
マッキーは、長らくフェザー級で活躍したあと、今回がライト級2戦目。相手の現RIZINライト級王者ホベルト・サトシ・ソウザは5連勝中。同階級での経験値は十分だ。飛び込んだばかりのライト階級に加え、RIZINルールという未知の領域を泳ぐマッキーだが、目の前にあるものすべてを利用する準備はできている。それはRIZINでは合法で、米国では反則とされる攻撃方法も含まれる。
マッキーはインド系スポーツ専門メディア『Sportskeeda』が報じた『LowKick MMA』のビデオインタビューのなかで、未知のルールへの怖さよりも、少年時代に憧れていた日本の伝統的なルールで戦えることへの期待感を口にしていた。
「僕は(RIZINの)ルールに興味津々だし、ワクワクしているよ。サッカーボールキックとか、グラウンドでの相手への膝蹴りとかね。子供の頃から夢見ていたんだ。PRIDE時代の試合を観ていると、最後には必ずと言っていいほどサッカーボールキックが繰り出されていたからね。ちょっと野蛮になって、僕が普段使わないような技を使うのが楽しみなんだ」
一方、ソウザは過去5戦中4戦で1本勝ちを収めている。18歳で母国ブラジルから日本に渡り、亡き父がブラジルで創設した「ボンサイ柔術」の支部を静岡県浜松に設立し、2人の兄や盟友クレベル・コイケとともに研鑽を積んできた。RIZINデビュー前、柔術界では天才的な実力を発揮し、様々なタイトルを獲得してきた。さらに寝技だけでなく、打撃にも強みを持ち、パウンドでの決定率も高い。何と言ってもケージではなくリングでの戦いという地の利がある。
マッキーは4月にパトリシオ・ピットブルに敗れるまで、3試合連続で1本勝ちを記録した。10月にはスパイク・カーライルを全会一致の判定で下している。 KOを奪えるキックも使いこなす点で、バランスの良さではソウザよりも優っている。
Bellatorでの試合とは違う環境での戦いに、マッキーは本領を発揮できないかもしれないが、こうした逆境はむしろ歓迎だろう。米国では反則の技を駆使するプランが上手くいけば大きな武器になる。また、今回はノンタイトル戦だが、勝てばRIZINフェザー級王座挑戦という青写真も描ける。マッキーがソウザを逆転する大きなモチベーションになるはずだ。対して、ベルトは賭けずとも、現王者の肩書で負けるリスクがあるソウザの方が失うものが多く、心理的プレッシャーがあるだろう。
>>スポーティングニュースの予想:A.J.マッキーが1本勝ち
■副将戦|クレベル・コイケ vs. パトリシオ・ピットブル|フェザー級
MMAの歴史のなかで、フェザー級最強ファイターの一角として恐れられてきたパトリシオ・”ピットブル”・フレイレは、KOで11勝、1本勝ちで12勝、判定で11勝と、あらゆるシチュエーションで勝利をものにできるオールラウンダーだ。一方、クレベル・コイケは1本勝ちで27勝を挙げ、得意の寝技で2019年のRIZIN所属以前から数えて7連勝を飾っている。
両フェザー級チャンピオンは、言ってみれば「剣に生き、剣に死ぬ戦士」だ。コイケはこの『闘犬』に対してリーチで17cm、身長で13cmのアドバンテージがあるが、パトリシオは常に不利な状況に怯えることなくハツラツとしている。どちらかがひとつのミスを犯しただけでも流れが変わるような、計算しつくされたハイレベルな戦いになるはずだ。
パトリシオの強みのひとつは、ディフェンスの魔術師でありながら、すぐさま反撃に転じることだろう。コイケが隙を見せれば、すぐにでも仕掛けてくるはずだ。とくに相手の動きに合わせてカウンターを狙うことが多く、コイケ側はうかつな動きにつけ込まれないように注意が必要だ。
コイケは、この2年の間に朝倉未来、元UFC戦士の佐々木憂流迦を実力で下し、牛久絢太郎から一本勝ちでRIZINフェザー級タイトルを獲得。RIZINで最も勢いのある、新エースといっていい立場になった。リングでの戦い方は熟知しており、この点ではパトリシオに対して強みがある。だが、業界屈指のトータルファイターにどこまでのアドバンスになるかは未知数だ。驚異の勝率を誇る各種絞め技・関節技に持ち込むにしても、対応力の高いパトリシオを捕まえきれるのか。
スポーティングニュースは、Bellatorのパウンド・フォー・パウンド・キングが勝者になることを予想する。
>>スポーティングニュースの予想:パトリシオ・ピットブルが全会一致の判定勝ち
■中堅戦|扇久保博正 vs. 堀口恭司|フライ級
因縁深い両者にとって今回が3戦目となる。堀口恭司は、2013年の修斗フェザー級王座決定戦、2018年の『RIZIN.11』で扇久保博正を下し、勝ち越している。
堀口はキャリア30勝のうち、伝統派空手仕込みの出入りの速い精確な打撃などによって15のKO勝ちを収めている。1本勝ちは4回のみだが、その1回は扇久保との最初の試合だ。直近6試合では3勝3敗。2021年からBellatorに籍を置くため、同団体代表としての出場となった。
対するRIZIN代表の扇久保は、直近6試合で5勝1敗、勝ち星は全て判定決着だ。 堀口と同様に空手(極真空手)をバックボーン持つが、ねちっこい寝技に強みを持っており、ポイントを稼いで長期戦で勝つタイプと言える。
2連敗中の扇久保だが、5年前の対戦では判定で惜敗しており、堀口の独特の打撃スタンスに対応できれば、「3度目の正直」で最終的に出し抜くことができるかもしれない。しかし、元Bellator世界バンタム級王者の堀口は、まだまだ脅威の存在である。セルジオ・ペティス戦では、不意の左バックハンドブロー被弾で決着がつくまで、圧倒的な強さを見せていた。堀口が同じような過ちを2度犯すとは考えられないだろう。相手に反撃の余地を与えず、一気に寝技で決めにいくこともあり得る。
過去2戦のフェザー級からフライ級にあげての3戦目となるが、やはり勝ち越しの堀口が優位に立ち続けるだろう。 今回はBellator代表だが、堀口が勝利してもRIZINスピリッツを世界に知らしめることができるはずだ。
>>スポーティングニュースの予想:堀口恭司が1本勝ち
■次鋒戦|キム・スーチョル vs. フアン・アーチュレッタ|バンタム級
元Bellator世界バンタム級王者アーチュレッタは、直近の4戦で2勝2敗。相手となるのは、キング・オブ・ザ・ケージ王者、元ONEバンタム級王者というアジアの強豪キム・スーチョル。過去4試合で3勝1敗だ。
アーチュレッタは、これまでBellatorの強豪たちと戦ってきた。過去の強豪たちよりもスーチョルが手強くなければ、リーチで約7.6cmの差をつけるアーチュレッタが、自分の仕事をやり遂げることができる確率は高くなる。
しかし、韓国MMA最強の呼び声高いスーチョルは、9月の扇久保博正戦において随所で対応力の高さを見せ、判定勝ちを収めている。今回もアーチュレッタの攻撃をさばき、疲れさせることができれば、ジャッジが好意的に評価する可能性が高い。アクションの面では意外な内容になるかもしれないが、キムの勝利は遠い結果ではないように思える。
>>スポーティングニュースの予想:キム・スーチョルが全会一致の判定勝ち
■先鋒戦|武田光司 vs. ガジ・ラバダノフ|ライト級
DEEPライト級王者の武田光司は、RIZIN王者ホベルト・サトシ・ソウザを追うライト級日本人ファイターとして期待され、現在5勝2敗、2連勝中だ。相手の元Eagle FCライト級王者のガジ・ラバダノフは4連勝中にある。
ラバダノフは、元UFCライト級王者として無敗のまま引退したハビブ・ヌルマゴメドフの刺客として今大会に送り込まれてきた。2021年8月のBellator初参戦時、ダニエル・ケリー戦で衝撃のKO勝利デビューを収めたが、2018年以降は多くが判定勝利となっており、やや決定力に欠ける面が否めない。
もともと五輪出場を目指していたレベルのアマチュアレスリングの猛者である武田は、サブミッションのスペシャリストとしても知られ、相手を窒息させ、必要以上の労力を強いることもできる。武田が勝機を見出すなら、レスリング技術に頼らざるを得ないだろう。
この試合は、どちらが相手を凌駕できるかで勝負が決まるかもしれない。体幹があまり強くない傾向があるラバダノフを武田がテイクダウンすれば勝機が見えてくる。ヌルマゴメドフは、Bellatorチームのキャプテンとしてだけでなく、愛弟子ラバダノフのセコンドを務める予定だが、戦局に影響があるかは定かではない。
>>スポーティングニュースの予想:武田光司がスプリット・デシジョンで勝利
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