米大手ブックメーカーのオッズは井上勝利に集中!早期決着がとくに人気

2022年12月13日(火)、この日、ボクシングのバンタム級にスポットライトが当てられる。井上尚弥とポール・バトラーが、バンタム級の世界主要4団体統一王座戦で激突するためだ。日本が誇る『モンスター』井上は、WBAスーパー・WBC・IBF、そして『The Ring』誌制定のバンタム級タイトルを、英国人ファイターのバトラーはWBOタイトルを懸けて戦う。海外ブックメーカーのオッズは圧倒的に井上優位だ。様々なシチュエーションにおいても。どんな状況になっているのか解説し、その上でスポーティングニュースの予想を公開する。

現在、世界最高のボクサーのひとりと言われる井上は、3階級制覇のチャンピオンだ。かつてのライバル、ノニト・ドネアに圧勝している。2022年6月の2度目の戦いにおいて、わずか2ラウンドで『フィリピンの閃光』を倒した。だが井上は、今度の相手バトラーを倒すにはもう少し時間がかかると考えている。 

「バトラーとグローブを交える準備は万端です」と井上は、専門メディア『Boxing247』の取材に語ったが、「バトラーは技術的にも優れたボクサーなので以前(ドネア戦)より長い戦いを予想しています」と話し、34歳の英国人のアウトボクシングスキルを警戒する。

バトラーはドネア以上のパフォーマンスを発揮できるのか? 元IBF世界バンタム級、英連邦スーパーフライ級王者のバトラーは、現在8連勝中だ。ジョン・リール・カシメロとの対戦が実現しなかったバトラーだが、次の大物・井上に挑む準備ができている。 

井上が勝利し、次なる未知の階級・スーパーバンタム級でさらなるベルト獲得を目指すのか、それともバトラーが究極の逆転劇を演じるのか? スポーツブッキング(ギャンブル)を手掛ける海外のブックメーカーでも、井上 vs. バトラーのカードは注目となっているが、そのオッズは圧倒的に井上優位をつけている。

海外スポーツでは、こうしたブックメーカーオッズから勝敗予想が立てられる。金銭が絡むこともあり、ただの運任せではなく、データをもとにした予想の上でのオッズとなっており、その精度はバカにできないものだ。井上 vs. バトラーのオッズからその勝敗予想を紐解いていこう。

 

■井上尚弥 vs. バトラー 4団体統一戦:オッズ

海外ブックメーカーは各国に数多あるが、ある北米の大手ブックメーカーでは、井上は「-3000」の人気で、バトラーは「+1100」の不利、つまり『負け犬=アンダードッグ』となっている。この数字は、100ドルを賭けて戻ってくる金額となり、「-3000」ということは、3000ドル賭けてようやく100ドルの儲けが出るということ。逆に「+1100」は100ドル懸けて1100ドル儲かるということだ。

 

■井上尚弥 vs. バトラー 4団体統一戦:実際のベッティング傾向

海外ブックメーカーでは、単にどちらが勝つだけでなく、どういったシチュエーションで勝つかについても細かく賭けることができる。今回の井上 vs. バトラー戦では以下のようになっている。

 

・井上のKO/TKO勝ち:-1200 

・井上の判定勝ち:+800 

・バトラーのKO/TKO勝ち:+2000 

・バトラーの判定勝ち:+2200 

・ドロー:+2500 

ここでも圧倒的な井上のKO/TKO勝ちへの期待の高さが伺い知れるだろう。『モンスター』と呼ばれる所以は、その破壊的なパンチ力にあり、スポーツベッティングを嗜むような目ざとい海外のファンもそれには同意しているといったところかもしれない。

 

・1-3ラウンドで井上勝利:-190

・4-6ラウンドで井上勝利:+350

・7-9ラウンドで井上勝利:+1100

・10-12ラウンドで井上勝利:+1800

・1-3ラウンドでバトラー勝利:+4000

・4-6ランドでバトラー勝利:+5000

・7-9ランドでバトラー勝利:+8000

・10-12ラウンドでバトラー勝利:+8000 

ラウンド別の傾向を見てみると、これまでの井上の試合内容に準じ、序盤のラウンドでの決着が人気だ。ドネアとの再戦での2ラウンドKO勝利だけでなく、バンタム級での戦いに限っても、ジェイミー・マクドネル、ファン・カルロス・パヤノは1ラウンド、エマヌエル・ロドリゲスを2ラウンド、マイケル・ダスマリナスを3ラウンドで粉砕している。井上自身はバトラーとの試合が長引くことを示唆しているが、やはりオッズ自体は3ラウンド内の決着に集中しているようだ。

 

■井上尚弥 vs. バトラー 4団体統一戦:TSN予想

井上がリングの天才と言われるのには理由がある。井上は現役ファイターのなかで5位にランクインする、ヒット/ミス率合計比+14.7を記録している。キャリア総合ヒット率は35.9%で、5番目の高さだ。  『モンスター』のヒット率はとにかく驚異的だ。ボクシングデータサイト『CompuBox』によると、井上は北米での『トップランク』プロモートデビュー戦の相手ジェイソン・モロニーに対して338発中107発(32%)を命中させている。そのうち44発がジャブであった。

マイケル・ダスマリナス戦では、2ラウンドでダウンを奪った。左フックをヒットさせ、その後も連打を浴びせた。井上はスポーツメディア『ESPN』のベルナルド・オスナ記者に対し、「1ラウンド目は、彼が何を持っていて、何ができるかを見たかった。その後、彼を倒せるという確信が生まれた」と語っていた。

2019年のワールドボクシングスーパーシリーズでの最初のノニト・ドネア戦では、井上は628発中227発(36.1%)を命中させた。今年2022年6月の再戦では、さらなるワンサイドショーとなった。85発中42発(49%)を打ち込み、2ラウンドは29発を打ち込んだ。井上は試合が進むにつれて調子を上げていく傾向がある。 

一方、WBO王者バトラーの試合の多くは長丁場だが、それでもKOで15勝をあげている。井上のドネア戦のパフォーマンスにはそれほど感心しておらず、この決戦を前にしても動じていない。「バトラーは死にたがっている」「井上が抹殺パンチで勝利」「この試合に同意することは誰かの死刑執行令状にサインするようなものだ」など、すでにこの試合に関するさまざまなコメントや予想が飛び交っている。バトラーは専門メディア『RingNews24』を通じて、こう語っている。

「彼(井上)は非常にハードヒットなパンチを持つが、ボクシングでは何が起こるかわからない。確かに彼は私をノックアウトするかもしれない。私は以前にやられたことがある(2015年のゾラニ・テテ戦)。ただ、はっきり言っておくが、私は勝てると信じて試合に臨むつもりだ。いつも通り、試合に勝って文句なしの世界バンタム級チャンピオンになれると信じてリングに上がるつもりだ」。

気高き『アンダードッグ』バトラーが世界に衝撃を与え、井上を倒すことは不可能ではないし、少なくとも井上自身が警戒するように、簡単にバトラーを倒せるという世間の評価は鵜呑みにできないだろう。試合をやってみるまでは両者の本当の競技レベルは測り知ることはできない。勿論、井上はこれまで誰をも凌駕することに成功してきた。バトラー戦でも結果は同じかもしれないが、バトラーの名誉のために言っておくと、彼は勝負強い。

現実的には多くの海外ブックメーカーのオッズが示すように、4団体統一の比類なき王者への道は日本で終わり、地元で人気のある『モンスター』がその仕事を成し遂げるかもしれない。早期のノックアウトもあり得るが、井上が述べたように、ドネア戦より長く続く可能性が高そうだ。そこでスポーティングニュースは以下のように公平に予想する。

 

<スポーティングニュースの予想:井上、TKO勝ち(5ラウンド)>