フルトンvs井上尚弥|井上のKO率は驚異の87.5%! フルトンKO撃破は確実?
7月25日(火)、日本人・アジア人初の4団体王座統一を成し遂げた井上尚弥が、4階級目のスーパーバンタム級2団体王者スティーブン・フルトンに挑む。この試合は長期戦が得意なフルトンが判定決着に持ち込めるかの議論もあるが、それでも「KO決着」になるというのが大勢の予想だ。
KO決着しかない? 井上のKO率は驚異の87.5%
世界中のボクシングファンの間ではウェルター級の4団体統一王座戦であるエロール・スペンス・ジュニア vs. テレンス・クロフォードの話題がもちきりだ。しかし、井上尚弥がスーパーバンタム級に階級を上げ、無敗のWBC、WBO同級王者スティーブン・フルトンに挑戦する7月25日の試合にも大いに注目するべきだ。
間違いなくパウンド・フォー・パウンド最高のテクニックと比類なき破壊力を持つファイターが新たな階級で世界タイトルに挑む。その相手は無敗のキャリアを誇り、常に冷静無比な戦いでアグレッシブなファイターを翻弄してきた。
フルトンは卓越したテクニシャンである。リーチを生かし、スピードとフットワークを駆使して、ポイントを稼ぎ、有利に試合を進める。一方の井上は強烈なパンチ力、絶妙のタイミング、そして正確なコントロールを兼ね備えた、天性のノックアウト・アーチストだ。試合の決着をジャッジの裁定に委ねるつもりはない。
なるほど非常に興味深い対戦である。パウンド・フォー・パウンドのランキングにも大きな影響を与えるだろう。ただ、ひとつだけ確信を持って予想できることがある。
この試合はノックアウトで決着するということだ。残念なことに、それはフルトンにとって良き前兆ではない。
現在スーパーバンタム級2団体統一王者であるフルトンのKO率は38.1%でしかない。21試合中、8KO勝利である。この3年間近く、一度もノックアウトを記録していない。最後のKO勝利は2019年8月のイサック・アベラール戦である。アベラールはそれまで無敗だったが、フルトンの左ボディショットで沈んだ。もっとも、アベラールがフルトン戦前に戦った相手の合計戦績は38勝63敗3分けというもの(容易い相手)だった。
それなのに、なぜこの試合に注目するべきなのか。アベラールが前半の6ラウンドを積極的な攻勢で試合を有利に進めていたからだ。狙いをフルトンの顎に絞り、プレッシャーをかけ続けていた。フルトンがこれまでのキャリアで挙げた最大の勝利は2021年11月のブランドン・フィゲロア戦だ。フルトンは勝利したものの、手数の多い積極的なフィゲロアのプレッシャーに晒され続けていた。
フルトンはなんとかフィゲロアとの激戦を制した。しかし今度の相手はレベルが違う。井上はボディ攻撃で相手の防御システムを崩し、そしてあとはたった1発のパンチで倒すことができる。
「Cool Boy Steph」(クールボーイ・ステフ)の通称を持つフルトンはアウトボクサーである一方、あえて接近戦に持ち込んでのボディ攻めを得意な戦法とする。フィゲロア戦を含め、これまでの試合ではその戦法は効果的だった。プレッシャーをかけられ、苦しい展開になったときも、耐えきる精神力を備えているようだ。しかし、これまでの相手は誰も井上のようなパワーを持ってはいなかった。
井上はこれまで戦った24試合のうち21試合でKO勝ちを収めている。KO率は驚異的な87.5%である。現在5連続KO勝利中であり、直近の14試合で13試合がKOによるものだ。その期間中、唯一フルラウンドを持ちこたえたのはノニト・ドネアだったが、そのドネアも昨年6月の再戦では2回TKOで敗れた。
もちろん、井上のパワーが階級を上げても通用するかどうかについての疑問は残る。しかし、フルトンが容易に接近戦を選び、井上のボディパンチを何発か受けたら、階級を上げたことは問題にならないのではないだろうか。人間の体はそれに耐えられるようにはできていないからだ。その猛攻を止めるにはコーナーがタオルを投げるしかない。
フルトンのファイティング・スタイルから見て、この試合はどこかのタイミングで激しい打ち合いになる。フルトンはスペースを空け、井上に接近を許すことになる。パワーで欠けるフルトンは「ザ・モンスター」こと井上と12ラウンドを戦い抜く覚悟を決めているはずだ。
しかし、井上はフィゲロアでもダニエル・ローマンでもない。ほかのどんなファイターとも次元が違う。12ラウンドのどこかで、井上は試合を終わらせるチャンスを見つけるだろう。
フルトンvs井上尚弥 主なオッズ(遊雅堂)
フルトンの勝利:3.50
井上尚弥の勝利:1.30
ドロー:16.00
フルトンの判定勝利:4.5
フルトンのKO/TKO/反則裁定/負傷判定での勝利:9.00
井上尚弥の判定勝利:3.25
井上尚弥のKO/TKO/反則裁定/負傷判定での勝利:2.10
※データは7月19日時点。