井上尚弥 vs スティーブン・フルトン勝敗予想プレビュー|圧倒的なKO率を誇る井上が優位か
WBC(世界ボクシング評議会)、WBO(世界ボクシング機構)世界スーパーバンタム級(55.4キロ以下)タイトルマッチが7月25日に行われ、王者のスティーブン・フルトン(アメリカ合衆国)に、同級1位の井上尚弥が挑む。決戦の舞台は東京都江東区の有明アリーナ。ここでは無敗同士がぶつかる注目の一戦の勝敗を予想してみたい。
■両者の立ち位置を整理
勝敗予想に入っていく前に、まずはプロフィールや成績をもとに、両者の立ち位置を整理していこう。
まずは2人のプロフィールを比較する。
井上尚弥
- 身長:165cm
- リーチ:171cm
- 生年月日:1993年4月10日(30歳)
フルトン
- 身長:169cm
- リーチ:179cm
- 生年月日:1994年7月17日(29歳)
ひと目見てわかるように、身長とリーチはフルトンに分がある。井上にとってはこの体格差をどのように埋めていくのか、試合の組み立て方に工夫が必要だろう。フルトンにとっては、差を生かして距離を取り、アウトボクシングに徹底することが考えられる。年齢に関しては1歳差と、ほぼ互角。スタミナや経験値という面で、大きな違いはないと言える。
次に、2人の成績を並べてみよう。
井上尚弥 24戦24勝(21KO)無敗
- 2022年12月13日 ◯ポール・バトラー(11R:TKO)
- 2022年6月7日 ◯ノニト・ドネア(2R:TKO)
- 2021年12月14日 ◯アラン・ディパエン(8R:TKO)
- 2021年6月20日 ◯マイケル・ダスマリナス(3R:TKO)
- 2020年10月31日 ◯ジェイソン・マロニー(7R:KO)
- 2019年11月7日 ◯ノニト・ドネア(判定3−0)
- 2019年5月19日 ◯エマヌエル・ロドリゲス(2R:TKO)
- 2018年10月7日 ◯ファン・カルロス・パヤノ(1R:KO)
- 2018年5月25日 ◯ジェイミー・マクドネル(1R:TKO)※バンタム級転向
- 2017年12月30日 ◯ヨアン・ボワイヨ(3R:TKO)
- 2017年9月9日 ◯アントニオ・ニエベス(6R:TKO)
- 2017年5月21日 ◯リカルド・ロドリゲス(3R:KO)
- 2016年12月30日 ◯河野 公平(6R:TKO)
- 2016年9月4日 ◯ペッバーンボーン・ゴーキャットジム(10R:KO)
- 2016年5月8日 ◯デビッド・カルモナ(判定3−0)
- 2015年12月29日 ◯ワーリト・パレナス(2R:KO)
- 2014年12月30日 ◯オマール・ナルバエス(2R:KO)※スーパーフライ級転向
- 2014年9月5日 ◯サマートレック・ゴーキャットジム(11R:TKO)
- 2014年4月6日 ◯アドリアン・エルナンデス(6R:TKO)
- 2013年12月6日 ◯ヘルソン・マンシオ(5R:TKO)
- 2013年8月25日 ◯田口 良一(判定3−0)
- 2013年4月16日 ◯佐野 友樹(10R:TKO)
- 2013年1月5日 ◯ガオプラチャン・チュワタナ(1R:KO)
- 2012年10月2日 ◯クリソン・オマヤオ(4R:KO)※ライトフライ級
フルトン 21戦21勝(8KO)無敗
- 2022年6月4日 ◯ダニエル・ロマン(判定3−0)
- 2021年11月27日 ◯ブランドン・フィゲロア(判定2−0)
- 2021年1月23日 ◯アンジェロ・レオ(判定3−0)
- 2020年1月25日 ◯アーノルド・ケガイ(判定3−0)
- 2019年8月24日 ◯アイザック・アヴェラー(6R:KO)
- 2019年5月11日 ◯パウルス・アンブンダ(判定3−0)
- 2019年1月26日 ◯マーロン・オレア(5R:TKO)
- 2018年9月30日 ◯ヘルマン・イバン・メラス(判定3−0)
- 2018年6月16日 ◯ヘスス・アウマダ・アルセ(9R:TKO)
- 2017年12月8日 ◯アダム・ロペス(判定2−0)
- 2017年4月4日 ◯ルイス・ロサリオ・ヴィジャファネ(判定3−0)
- 2016年7月2日 ◯クリスチャン・レンテリア(R:TKO)
- 2016年4月19日 ◯アダルベルト・ゾリージャ(4R:TKO)
- 2015年12月29日 ◯ジョシュア・グリアー・ジュニア(判定2−0)
- 2015年9月15日 ◯サム・ロドリゲス(判定3−0)
- 2015年6月20日 ◯パブロ・クプル(3R:RTD)
- 2015年4月25日 ◯ジャマール・パラム(3R:KO)
- 2015年1月31日 ◯エリック・ゴテイ(判定3−0)
- 2014年12月5日 ◯ベンハミン・ブルゴス(判定3−0)
- 2014年11月20日 ◯デイメン・ウッド(判定3−0)
- 2014年10月4日 ◯アイザック・バジャー(2R:TKO)
両者ともに20戦強を戦い、ともに無敗。ただ、その中身を見ると、大きな差異が浮き上がる。
まずはKO率。井上は87.5パーセントと高いKO率を誇る一方、フルトンのそれは38パーセントと大きな隔たりがある。ここから感じられるのは両者のスタイルだ。“モンスター”の異名を取る井上は、規格外のスピードとパワーで対戦相手をなぎ倒してきた。井上とは対象的に、フルトンは的確にパンチを当てる、いわばポイントを稼いでいくスタイル。ハードなパンチはないかもしれないが、守備力に優れ、好機を逃さない冷静さを持っていると言えるだろう。
もう一つは階級。フルトンはデビューから一貫してスーパーバンタム級で戦っている。一方、井上はこれまでに3階級を制してきており、今回で4階級目となる。注目したいのは、階級を上げた直後の初戦。ライトフライ級から一足飛びで2階級を上げ、スーパーフライ級に挑戦した際の相手は、約12年に渡って王座に君臨していたオマール・ナルバエス(アルゼンチン)だった。それでも井上はチャンピオンを2ラウンドでノックアウト。世界を驚かせた。
バンタム級挑戦時も同様。ジェイミー・マクドネル(イギリス)は身長175センチと井上よりはるかに大きく、10年以上無敗を誇っていた。下馬評を覆して、井上はわずか112秒でTKO。体格差をものともしない姿に度肝を抜かれた人も多いだろう。この実績を見ると、4階級目のスーパーバンタムでも……と思わされる。
■井上勝利を予想
井上、フルトン、両者のプロフィールやこれまでの戦績を確認してきた。そして、ここからは肝心の勝敗予想。結論から述べると、ここでは井上の勝利と予想したい。
理由はやはり、これまで井上が重ねてきた勝利の重さだ。バンタム級史上初の4団体統一王者となったポール・バトラー戦、決着をつけた2度目のノニト・ドネア戦など、名だたるチャンピオンたちをKOでねじ伏せてきた。単純に、この選手は強いのだ。
また、井上は階級を上げて苦労した様子がないことはすでに確認したとおり。スーパーバンタム級に殴り込みをかける今回も、これまで同様に井上の圧倒的な勝利で終わるのではないだろうか。厳しい減量を重ねてきた井上にとって、スーパーバンタム級こそが適正階級と見る識者もいる。
最後に、ほかのメディアの見解なども紹介したい。この試合を配信する「Lemino」のアンケートによると、最多得票は「井上の判定勝ち」、続いて「井上の7回KO勝ち」が支持を集めている。イギリスメディア「British Boxing News」は現役選手やトレーナー、メディアなど11人の予想を紹介。そのうち7人が井上の勝利を予想し、中には「フルトンには荷が重い。井上は本物のモンスターで、安定感もあり、信じられないパワーを持っている」というコメントもあった。
世間の下馬評も井上優勢の意見が多く見られる。しかし、最後までなにが起こるかわからないのがボクシング。ただ一つ確かなのは、この試合が世界中の注目を集めるということだ。